鏡の事件簿

アクリルミラーは姿見に不向き?!歪みが生まれやすい理由を解説します!

2024/11/20

鏡とガラスの博士
こんにちは!ドクターKです。みんなからは「博士」って呼ばれています。

今回は、「割れない」「軽い」ミラーと言われるアクリルミラーについて解説します。

実は20年ほど前、コーワでもアクリルミラーを販売していたことがありました。
ところが、2〜3年で取り扱いをやめることに。
というのも、その特徴をお伝えしきれておらず、お客様にご満足いただけなかったことがあったからです。

アクリルミラーには、一般的な鏡でイメージされるガラスミラーとは大きく異なる点があります。
それは、画面越しで見ても伝わりにくい「歪み」です。
それだけでなく、アクリルミラーは歪み以外にも、ちょっと不便な特徴があるんです。

20年前の反省も込めて、アクリルミラーのメリット・デメリットやガラスミラーとの違いを詳しく解説します。
アクリルミラーのご購入を検討されている方は、ぜひその違いを知って、後悔しない鏡選びに役立ててくださいね。

アクリルミラーとは

アクリルといえば、コロナ感染対策で仕切りに使われる透明の「アクリル板」が、いまや身近な存在になりました。
最近では需要が急激に増えて生産が間に合わず、手に入りにくい状況が続いているのだとか。
ホームセンターや100均などでも、ご自身でカットして使うアクリルシートやアクリルパネルなどが販売されていますね。

アクリルミラーは、そんなアクリル板を使って作られる鏡です。
一般的に使用されているガラスミラーとはどんな違いがあるのでしょうか。

アクリルミラーの構造

アクリル板は、プラスチック樹脂を延ばしてシート状にしたもの。
アクリルミラーは、このアクリル板の片面に銀をメッキして金属膜を形成し、光を反射させるように加工したものです。

無機質のガラスと全く異なる素材ですが、見た目は同じような透明の板で、鏡としての構造もガラスミラーと全く同じです。

こんなところで使われています

プラスチックでできたアクリルミラーは粘着テープでも貼り付けることができるほど軽いため、化粧品店やドラッグストアの展示用ポップによく使われています。
また、手鏡コンパクトミラーなど手軽に持ち運びしたいものや、まれにクローゼットや下駄箱の扉など軽量化したい部分の鏡に用いられることもあります。



他にも、道路のカーブミラーや店舗内のコーナーミラーにもよく使われています。
これは、アクリルが比較的柔らかくて曲面を作りやすいため。
落ちても割れにくく、破片が飛び散りにくいので、安全面からも適した使い方ですね。

ただし高級感を求める場面ではアクリルミラーの使用はおススメできません。
プラスチックですから、輝きではどうしてもガラスミラーに劣ってしまいます。
卓上用のミラーや姿見など、洗練された印象を与えたい場合はガラスミラーを選びましょう。

アクリルミラーのメリット

アクリルミラーには、ガラスミラーとは違ったメリットがあります。
使用されるシーンや場所によっては、ガラスよりアクリルが適していることもあります。

では、アクリルミラーが適しているのはどんなケースなのでしょうか。
アクリルミラーのメリットについて、他のミラーと比較しながら、どのような時に使用するのがおススメか、解説します。

軽くて割れにくい

アクリルは軽量素材です。比重で言うと、アクリル1.19ガラス2.5
例えば1平方メートルで5mm厚の板なら、アクリルは6kg、ガラスは12.5kgになります。2倍以上も重さが違うんですね。

アクリルミラーは軽いため、両面テープだけで簡単に貼り付けることができ、比較的大きなミラーであっても設置が楽です。
また、割れにくいのも大きなメリットです。ガラスミラーと比較すると柔らかく、力が加わると「しなる」のでなかなか割れません。

軽くて割れにくいということは、比較的安全な素材であるということ。子どもの遊び場や赤ちゃんのおもちゃにも安心して使うことができます。

色の再現度が高い

ガラスミラーでの映りに見慣れていると、アクリルミラーを見たときに「自分の顔ってこんなに赤いの?!」と思うかもしれません。
これはガラスそのものの「色」が原因です。

ガラスは一見透明に見えますが、実はやや緑がかっているんです。
ガラスの断面を見ると、緑色に見えますよね。これは、ガラスの成分に含まれる金属の色が出ているからなのです。

一方、アクリルはとても透明度が高い素材です。これは、光の通しやすさを表す「透過率」が高いということ。
透過率が高いので、その分、ミラーの裏にメッキされた金属に当たる光の量も多く、たくさんの光を反射することができます。これを「反射率」と言います。
あまり聞き慣れない言葉ですが、とにかく「透過率」と「反射率」が高いために、反射する色の再現度が高いのです。



沖縄の美ら海水族館で優雅に泳ぐジンベエザメを思い浮かべて見てください。
彼が暮らしているのは、なんと厚さ60cmもあるアクリル板でできた水槽の中。
水圧に耐えられるようにそこまで厚みをもたせていますが、透明度が高いので、まるですぐ隣にいるように泳ぐ姿を眺めて楽しむことができるのですね。

アクリルミラーのデメリット

ここまでアクリルミラーのメリットばかりをお伝えしてきました。

これだけ聞くと、「アクリルミラーは安全性が高いきれいに映るし、ガラスよりいいんじゃないか」と思いませんでしたか?
しかし残念ながら、いいことばかりではありません。

割れにくく軽い素材だからこそ、ミラーとして使うときにはさまざまな注意点があります。
次はアクリルミラーの注意点を解説します。

柔らかいから傷つきやすい



ガラスに比べると、アクリル板は手で曲げられるほど柔らかく表面も傷がつきやすいという特徴があります。
見た目はガラスと同じように丈夫そうに見えますが、実は2Hのえんぴつで引っ掻くだけでも傷がつきます。
もっと言えば、ティッシュや布で拭くだけでも細かな傷が入り、白く曇ってきます。

こうなると、せっかく透明度が高くてきれいに映るアクリルミラーも台無しになってしまいます。

また、アクリルは静電気が発生しやすい素材なので、表面によくがつきます。
そのため、こまめな掃除が必要ですが、布などで拭くたびに傷がついてしまうというジレンマが・・・。

傷つきやすいのにこまめな掃除が必要。そんなアクリルミラーのお手入れは、非常に気を使う作業なのです。

アクリルミラーは歪みます

アクリルミラーは柔らかいため、反り歪みが生じやすい素材です。
実は、室温の変化だけでも歪んでしまうほどなのです。ここでは、歪みのメカニズムを解説します。



昔のコタツを思い出してください。
コタツの内部が一定の温度以上になると自動的にスイッチがオフになり、冷えてくるとまた自動的にスイッチがオンになりますね。
これをコントロールしているのが「サーモスタット」と呼ばれる仕組み。

サーモスタットには、熱によって伸びたり縮んだりする2枚の金属が使われています。
一方は熱によって伸びやすい金属、もう一方は伸びにくい金属を用いているため、温度が上がると伸びようとする金属とそのままの形状を保とうとする金属の作用で弓なりに変形します。
このように変形してスイッチのオンオフを切り替えているのです。

話をミラーに戻すと、アクリルメッキされた裏面の金属の間でも、このサーモスタットと同じ原理が働きます。
アクリルは熱によって伸びやすく、金属は伸びにくい性質。
30度を超える暑い日などは、熱でアクリルが伸びようとしますが、金属は伸びないために変形して歪みが生まれてしまいます。
また、アクリルでも同様のことが起こります。
壁は温度で伸び縮みしないので、テープで壁に張り付いている部分のアクリルと、貼っていない部分でぐにゃぐにゃと歪みが発生してしまうのです。

姿見には使えません

鏡が大きいほど歪みも大きくなるので、洗面所の鏡姿見などの大きな鏡にアクリルミラーは不向きです。
アクリル自体が反りやすい素材であることに加え、上でご説明したように、熱によって伸びるという性質があるため、ダブルの作用で状態によっては映り方がかなり変わってしいます。

大型の全身鏡なら、見ると気分が悪くなるほど歪みが大きく出てしまうかもしれません。

インターネット上でみなさんにその違いを実感していただくのはなかなか難しいのですが、このデメリットを知らずに購入された方はきっと、「失敗した!」と思われるでしょう。

お客様皆さんに納得のいくお買い物をしていただきたいので、コーワではアクリルミラーをおすすめしていません。

姿見に使うならこのミラー

アクリルミラーの特徴から、アクリルミラー姿見に適していないことを解説しました。

では、姿見に使うのはどんなミラーが良いのでしょうか。ズバリ、ガラスミラーかアルミミラーがおすすめです。
鏡に求める機能によって、どちらかを選び分けていただくとよいでしょう。

ガラスミラーとアルミミラーの違いから、姿見に使う際の違いを解説します。

ガラスミラー

ガラスはとても硬くてほとんど伸びない素材です。
ガラスと裏面の金属の熱膨張率の差が小さいので、アクリルミラーのように室温の変化による歪みが出ることもありません

また、表面も硬くて丈夫で傷に強いという特徴があります。
お手入れの際に、布でゴシゴシ拭いても大丈夫。耐久性も高いため、室内の姿見として使うならガラスミラーがおすすめです。

価格はアクリルミラーと変わりませんが、より高級感があり、お部屋のインテリアとしても一役買ってくれるでしょう。

アルミミラー

ガラスミラーは割れるから心配、という方にはアルミミラーがおすすめ。

ガラスより柔らかいですが、アクリルよりは反りが少なく軽くて丈夫です。
アルミでできているので、公共施設などにもよく使われています。
インターネットで購入する際にも、配送時の割れや欠けの心配がいりません。

ただし、アクリルミラーほどではないですが、ガラスミラーと比較すると歪みやすく傷がつきやすいので、お手入れにはご注意を。

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鏡をご自分で交換する場合は、少し重たいガラスミラーでも、コツさえつかめば意外に簡単です。

プロの技を公開していますので、チャレンジしたい方はぜひ参考にしてみてください。



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まとめ

アクリルミラー軽量で割れにくい
さらに、透明度が高いため、色の再現性に優れ、きれいに映る

アクリルミラーは、傷が付きやすく歪みやすいというデメリットがある。
そのため、姿見には不向き

姿見のような大きな鏡には、ガラスミラーかアルミミラーがおすすめ。

・ガラスミラーは歪みにくく傷が付きにくい。アルミミラーは軽量で割れないという特徴がある。

 

アクリルミラーのメリット・デメリットや、歪みやすい理由についてご紹介しました。
アクリルミラーにするかガラスミラーにするかで購入を迷っている方の参考になれば幸いです。
それでも迷ったら、ミラー専門店のプロに相談してみてくださいね。

ライター

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博士

鏡とガラスの専門家・ドクターKです。「博士」と呼ばれています。皆さんがよく巻き込まれるトラブルの原因やメカニズムを動画やコラムでわかりやすく解説します。