強化ガラスとは?仕組みと用途を分かりやすくゼロから徹底解説!
2025/01/22
こんにちは!ドクターKです。
皆さんは、「強化ガラス」をご存じですか?
強くて割れないガラス、とそんなイメージを持っている方はいると思いますが、実際どんなガラスなのかは、ガラスに詳しい方でないと知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、強化ガラスと普通のガラスの違い、強化ガラスは割れるのか?、割れたらどうなるのか?、どうやって作られているのか?、どんな用途に向いているのか?など、鏡とガラスの専門家・ドクターKが、強化ガラスのことを詳しく解説します。
強化ガラスのメリット・デメリットや特徴などを知れば、強化ガラスの用途も広がりますよ。
強化ガラスの知識を深めて、自宅やオフィスや建物など、様々な場所で安全に利用してください!
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強化ガラスとは?
まずは、強化ガラスが普通のガラスとどう違うのか?から説明していきます。
強化ガラスと普通のガラスの主な違いは?
一般的に普通のガラス(フロートガラス)は、硬く透明感があるのが特徴です。そのため窓や食器、車の風防など様々な場所で使われています。
しかしその一方で、フロートガラスは「もろく、衝撃に弱い」という性質を持っています。また一般的なガラスは割れた後の形も非常に鋭利で、手などを傷つけてしまう危険性があります。
ガラスのそのような問題点を解決するために生まれたのが強化ガラスです。強化ガラスとは、衝撃などで割れにくいように特別な加工を施したガラスで、フロートガラスに比べて強度が高く、割れたときに鋭利な形状にならないのが特徴です。このような特徴から「安全ガラス」と呼ばれることもあります。
普通の板ガラスだけではなく「すりガラス」「フロストガラス」「スモークガラス」など様々な種類のガラスも強化ガラスに加工することが可能です。
強化ガラスと普通のガラス、強度の違いはどれくらい?
強化ガラスは、普通の板ガラスに比べて3倍から5倍の強度があります。
例えば硬いボールを普通のガラスに落としたとき、ボールを落とす位置がガラス面から10センチの高さまで割れなかったとすると、強化ガラスであれば30センチから50センチまで割れずに耐えることができます。
強化ガラスが割れるとどうなるの?
強化ガラスとはいえやはりガラスですので、無理な力がかかれば割れてしまいますが、その割れ方にも特徴があります。
強化ガラスは割れた時、通常のガラスとは違い、粉々のフレーク状になります。条件にもよりますが1センチ角からそれ以下の細かい粒になり、一般的な板ガラスのように鋭利な破片になりにくいという特徴があります。
また強化ガラスはある一定以上の力や衝撃がかかると、ガラス全体、またはガラス面の広い範囲が一気に粉々になるという性質を持っています。そのため一般的なガラスに比べて破損の瞬間の様子は派手になりますが、それも強化ガラスの特徴です。
強化ガラスの原理を分かりやすく徹底解説
そもそもなぜガラスが割れるのかについて考えてみましょう。
たとえばボールがガラスの上に落ちてきた時、ボールが当たる面の方向に鏡がたわむことになります。この時ボールが当たるガラス面は縮み、外側の面は伸びてしまいます。この縮む力のことを圧縮応力、伸びる力を引張り応力といい、引っ張り応力が鏡の強度を超えると鏡が割れてしまうのです。
これは紙が破れるのと同じ現象です。鏡というと硬い物質のため、紙とは違うもののように思えますが、実際は引っ張り応力が鏡の耐久力を超えた時に割れてしまうので、紙が破れるのと現象そのものは変わりません。
一方、強化ガラスはどのような仕組みになっているのでしょうか?
強化ガラスは特殊な加工によって両面の約6分の1の厚みに圧縮応力層(圧縮応力が働く層)を作り、引張り応力層(引張り応力が働く層)を鏡の内部に閉じ込めます。物がぶつかったときに、鏡の両面に縮む力が働き、内部の引張応力が相殺されるため割れにくくなるのです(強度が上がる)。
紙の両面を下敷きなどのプラスティックのシートで保護して耐久性を上げたようなイメージです。
強化ガラスの製造方法とは?
強化ガラスは普通の板ガラスを加工して作ります。一般に強化ガラスとして出回っているものは、板ガラスの熱処理によって作られているものがほとんどです。
普通のガラス板を強化ガラスに加工するには、まずガラスを軟化点(ガラスが変形し始める温度)の約650℃まで加熱します。次に熱したガラスに冷風をかけて急冷していきます。このときに表面のみが冷やされて、その後、内側がゆっくりと冷えることでガラスの表面に圧縮応力層、内部に引張応力層が発生します。
これは例えていうなら、ベットの上でシーツをピンと張って持っているような状態です。シーツを強く張れば張るほど、上にものを乗せたときのシーツのたわみが少なくなり、ベット本体を押す力が弱くなります。これが強化ガラスが外からの力に強い仕組みです。
ところで強化ガラスとふつうのガラスを外見で見分けることはできるのでしょうか?
残念ながら肉眼では判別することはほとんどできません。しかし偏光板を使って見ると、角のところに虹色の縞を確認することができます。これは強化ガラスの表面に強い応力がかかっているために発生するためです。
強化ガラスの重さは?普通のガラスより重いのか?
一般的なガラスの比重は2.5です。これはガラスが同じ体積の水の重さの2.5倍の重量があるという意味です。例えば縦20センチ、横50センチ、厚さ1センチ、体積1000立方センチメートルのガラスの重さは、およそ2.5kgになるということです。
強化ガラスも、元は普通のガラスに引っ張り力を加えた物なので、重量は一般的なガラスと変わりません。
強化ガラスは熱にも強いのか?
強化ガラスもある意味では耐熱ガラスと言えるかもしれません。普通のガラスに比べて割れにくい、強いということは、熱によって受ける力に対しても耐力があるということです。
ただし、強化ガラスはメーカーが耐熱ガラスとして作っているわけではないため、耐熱のために使うのは危険です。たまたま耐熱性があるだけで、何℃までなら大丈夫とか、何時間耐えた、などの検査データはありませんし、保証値もなにもありません。
割れるか割れないか、使用できるかどうかは自己責任となりますのでご理解ください。
強化ガラスおすすめの用途とは?
では強化ガラスの原理をざっと理解できたところで、その実際の用途について説明していきます。
強化ガラスを使うべき場所
強化ガラスを使うのに向いている場面といえば、やはりテーブルトップや、お店や自宅などのディスプレイ棚です。割れにくいうえに、割れた際にも普通のガラスよりは安全ですので、人が触れやすい場所や何かがぶつかる可能性の高い場所に使うのに向いています。
一般的にガラスは厚さによって強度が変わります。ですので、使う場所や目的に合わせた厚さのガラスを選ぶことで、より安全に使用することができるでしょう。もちろんカットのサイズや穴加工なども可能ですので、テーブルトップやオリジナルの棚など、目的に合わせて形状をカスタマイズすることもできます。
<強化ガラス使用例>
1)テーブル保護のためのカバーガラス
例)1500×800mm 厚さ:6mm
2)洋服屋さんの販売棚(左右で支え)
例)1200×300mm 厚さ:8mm
3)ショーウィンドウ(4辺枠支え)
例)900×900mm 厚さ:6mm
強化ガラスの加工について。カットや穴加工は?
強化ガラスは後からの加工ができないという点に注意しなければなりません。なぜなら、加工しようとすると粉々に砕け散ってしまうからです。ですので、例えば工事現場で棚の大きさを見ながら適切な大きさに切るようなことができません。
「強化ガラスの製造方法」の項目でご紹介したように強化ガラスは普通の板ガラスを加熱、冷却して作りますので、カットや穴加工は熱処理の前までに済ませておく必要があります。
強化ガラスは防犯目的では使えません
また強化ガラスで勘違いしやすのは、防犯ガラスにはならないという点です。住宅の窓ガラスなどにも使われますが、一か所に強い力がかかると全体が粉々になって割れてしまうという性質があるためです。
強化ガラスという名前ではありますが、表面硬度(傷のつきやすさ)は普通の鏡より若干落ちてしまいます。たとえば、金づちで叩いた場合、一点が割れた場合に全体も砕けてしまうため、面としての強度は強いのですが、点に対しての強度は弱いのです。
強化ガラスは割れた時に安全なガラスというだけであって、防犯に使えるほどガラスの表面が強化されたガラスという意味ではないので注意してください。
防犯性能を持たせたい場合にはフィルムを挟むなどの更なる加工が必要になります。
強化ガラスを買うときの注意点
強化ガラスを実際に買う時の注意点について説明します。
こんな厚みとサイズがあります
強化ガラスの強さは一般的に厚みによって変わります。
薄いものでは4ミリ、厚いものでは19ミリのものが製造販売されています。3ミリ厚以下のものは、強化ガラスとしては強度が不十分になってしまうため製造はできますが「半強化」と呼ばれています。
必要な厚さは使用条件やガラスの大きさによって大きく変わります。使用状況や形状から理想的な厚さの目安を導き出すことはできますが、やはりガラスですので、絶対に割れないという条件を作るのは無理でしょう。
強化ガラスは好みのサイズをミリ単位でオーダーすることが可能です。しかし運搬などの都合上、あまり大きなものは作ることができません。またその大きさもガラスの厚さによって変わります。厚いガラスになると、その分重量も重くなるため、サイズがやや制限されます。厚さが5ミリのものであれば、最大で1辺2438ミリ(ただし短辺と長辺の和が2800ミリになること)のものまでオーダーすることができます。
注文するときの注意点
強化ガラスは前述の通り、後からの加工ができません。
そのため、どのような形状が必要なのかを前もってしっかりと計算しておく必要があります。
またガラスの製造には誤差があります。誤差は厚いガラスの方がより大きくなってしまいますので、その分を見越して採寸してください。(例10mm厚のガラスの場合は±2mmの製造誤差が出来てしまいます)
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まとめ
強化ガラスは一般的な板ガラスよりも強度があり、割れてしまった後も普通のガラスよりも安全です。ですので、割れた時を想定して破片が飛び散ると危険な場所に設置するようにしましょう。ガラステーブルやショーウィンドウ、学校の窓ガラスなどによく使われています。
ミリ単位でのサイズオーダーや穴開け加工も可能ですので、テーブルトップやディスプレイ棚など、より安全に使いたい場所には向いているでしょう。
いかがです?「強化ガラス」について新しい知識は得られましたか?
強化ガラスを、自宅やオフィスや建物など様々な場所で安全に利用してください!
【動画】ネコロボ事件簿「強化ガラスの謎!どれくらい強いの?」
ライター
博士
鏡とガラスの専門家・ドクターKです。「博士」と呼ばれています。皆さんがよく巻き込まれるトラブルの原因やメカニズムを動画やコラムでわかりやすく解説します。